校長室から

未来へ         

 本校は、双葉郡の方々の「双葉の教育の灯を絶やすことなく灯し続けたい」という強い願いと、震災と原子力災害からの復興を果たすため、先進的な新しい教育を創造しようとする国など関係機関の熱い想い、そして、なにより、震災後こどもたちの中に芽生えた、復興をなしとげようとする強固な意志、夢を実現しようとする意欲、新しい価値観、創造性を礎として、ここに誕生しました。関係の皆様に厚く御礼を申し上げます。新入生の皆さん、君たち一人一人が、この学校の歴史と伝統を築き上げる、パイオニア、開拓者です。失敗を恐れず、自分こそが新しい生き方、新しい地域、新しい価値の創造者になるんだという気概を持って、いろいろなことに挑戦していってください。未来に向かって。

   福島県立ふたば未来学園高等学校 校長 丹野純一


 

 

入学式 校長式辞

                       ふたば未来学園高等学校入学式 式辞


 太平洋を見渡すこの広野の丘に季節外れの雪が舞う中にあっても、桜の花が力強く咲き誇る今日の佳き日、内閣府大臣政務官・復興大臣政務官 小泉 進次郞 様をはじめ多くのご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席を賜り、福島県立ふたば未来学園高等学校第一期生を迎え入れる入学式をかくも盛大に挙行できますことは、真に喜ばしく、ご臨席の皆様に厚く御礼を申し上げます。
 さきほど入学を許可いたしました百五十二名の新入生の皆さん、入学おめでとう。皆さん一人一人の入学を、心から歓迎します。そして、ここまで、本当によく頑張りました。
 震災と原発事故という、人類が経験したことのないような災害に見舞われ、いまなお、ふるさとを離れた地で、五度目の春を迎える生徒もたくさんいます。避難先を転々とし、慣れない土地や学校での生活で、筆舌に尽くしがたい困難に遭い、未だにそれに向き合っている生徒も少なくないと思います。また、避難している人に限らず、地震、津波などによる様々な被災・被害からの復興と、放射線に対する不安など、多くの皆さんが様々な困難に直面している状況は今も続いています。
 また、少子・高齢化、過疎化、産業空洞化などが全国的に深刻化する中、震災と原発事故はこれらの課題を先鋭化させ、双葉郡をはじめとする福島県は、いわば課題先進地域となっています。
 このような中、私たちは、これまでの価値観、社会のあり方を根本から見直し、持続可能な循環型社会の実現、自立した新たなコミュニティ・まちづくり、再生可能エネルギー社会の実現など、新しい生き方、新しい社会の建設を目指し、変革を起こしていくことが求められています。それは、震災と原子力災害を経験した私たちに、未来から課せられた使命、ミッションということもできます。
  私たち人間は、理想とする未来の姿を思い描きながら、いま、ここにある現実を、少しずつ、少しずつ変えることができる存在であります。それは未来を創造することにほかなりません。
 逆に、人間は、既存の生き方や価値観、システム、社会のあり方に黙従し、思考を停止したままでも生きていくことはできるのです。しかし、そこには、自由はありません。もはや、約束された未来もないのです。
 震災と原発事故を経験した私たちは、世界中の誰よりもそのことをよくわかっています。
 多くのものを失ったからこそ、他の地域ではできないような、野心的で未来を先取りするような新たな挑戦が可能になっており、その動きは既にあちこちで始められています。
 ふたば未来学園高等学校は、まさに、未来への挑戦であります。この学校は、双葉郡の方々の「双葉の教育の灯を絶やすことなく灯し続けたい」という強い願いと、復興を実現し、先進的な新しい教育を創造しようとする国など関係機関の熱い想い、そして、なにより、震災後、こどもたちの中に芽生えた、復興をなしとげようとする強固な意志、夢を実現しようとする意欲、新しい価値観、創造性、高い志を礎として、誕生しました。
  皆さん一人一人が、この学校の歴史と伝統を築き上げる、パイオニア、開拓者です。目の前には大きな海原しか見えません。道はあなたたちがつくるほかないのです。       
  この地から、このときから、「未来創造」を始めようではありませんか。この校章が示すとおり、未来は私たち一人一人が互いに手を取り合って建設していくものなのです。人間は自分の生き方を自分で選ぶことができる存在なのです。わたしたちは、わたしたちの手でこの社会を変えていくことができるのです。自らを変革し、地域を変革し、社会を変革する「変革者たれ」。この言葉をこの学校の建学の精神を表す言葉として、ここに刻みたいと思います。
 そして、私たちが変わるために、社会が変わるために、大切にすべき価値観や考え、変革のための理念は何か。それは、「自立」、「協働」、「創造」であります。既存の価値観、システムに過剰に依存することなく、自律心を持って自分の頭で考えぬく主体性を身につける、「自立」。そして、どんな困難な課題であっても、多様な主体と共に力を合わせて立ち向かう、「協働」。さらに、これまでの社会のよさに磨きをかけながら、新しい生き方、社会をつくりだしていく、「創造」。
 ふたば未来学園高等学校は、「変革者たれ」という「建学の精神」のもと、「自立」「協働」「創造」を校訓として、「未来創造型教育」を力強く展開していきます。地域と共に。世界と共に。 
 次に、「未来創造型教育」の方針と、生徒の皆さん一人一人に期待することについて、お話しします。
 第一に、生徒が主体的に動く学校にしていきます。生徒の皆さんは、受け身ではなく、自ら動いてください。動くと何かが変わり、いろいろな人との出会いの中で、自由で豊かな学びの空間がつくり出されていくでしょう。
  第二に、失敗を恐れず困難な課題に挑戦する生徒を支え、応援する学校にしていきます。答えのみつからないような難しい課題にも果敢に挑戦していってください。若者は失敗や挫折を糧に成長していくものです。失敗を恐れず、自分こそが新しい生き方、新しい地域、新しい価値の創造者になるんだという気概を持って、いろいろなことに挑戦し、本校での先進の学びに取り組んでいってください。また、中学校時代に思うように力を発揮できなかった生徒は、じっくりとやり直していきましょう。先生と仲間は、失敗と挫折から何度でも立ち上がる君を全力で支え、応援してくれるでしょう。
 第三に、現実社会の中で学ぶ学校にしていきます。困難な課題が山積する現実社会での課題解決型学習、アクティブ・ラーニングを中心にして、主体的な学び、協働の学び、創造的な学びにより未来を創造する新しいタイプの授業を展開していきます。どんどん、現実社会に飛び出していってください。そして、原子力災害からの復興や、地域再生、スポーツをとおしてみんなに元気や勇気を与えるなど、それぞれの夢を現実社会の中でふくらませ、鍛え、学校で学んだ知識を現実世界で生かし、未来につなげていってください。。
 第四に、地域・コミュニティや世界と共に学ぶ学校にしていきます。国内外の高校生と積極的に交流したり、地域・コミュニティと変革のための理念を共有し、困難な課題の解決のために共に学び、変革を成し遂げていきましょう。
 第五に、夢を開く窓がたくさんあるような学校にしていきます。そのために、ふたばの教育復興応援団の皆様を始め、ご来賓の皆様のお力添えをいただきたいと存じます。生徒の皆さんは、いろいろな窓を開き、本物に触れてください。そして、将来、夢を実現した暁には、本校の窓の一つになってください。
 第一期生の皆さん、皆さん一人一人が「未来」です。それぞれの思い描く未来を、この学校で実現していきましょう。背負いすぎないで、つながりあって。このすばらしい校歌を口ずさみながら。そして、皆さんがまいた一粒の種がこの地に根を張り、双葉から出た芽がやがて見上げるような樹となり、たくさんの実を結んでいくことを夢見て、共に歩んでいきましょう。
  保護者の皆様に申し上げます。お子様のご入学おめでとうございます。今日この日を迎えるにあたり、震災と原発事故による避難生活を始めとした皆様の様々なご労苦を思う時、本日の喜びは如何ばかりかと拝察いたします。私ども教職員は、皆様にとってかけがえのない存在であるお子様一人一人について、未来からお預かりし、未来へ送り出すという使命感と情熱を持って、誠心誠意、教育に当たりたいと存じます。
 結びに、この学校の開校に向けて、並々ならぬお力を注いでいただきました、国、福島県、双葉郡八町村、ふたばの教育復興応援団、様々なご支援をいただきました大学、企業など、すべての関係各位、そして、本日ご臨席を賜りましたご来賓の皆様に重ねて衷心より感謝を申し上げますとともに、新入生の皆さんのふたば未来学園高等学校での生活が、知的興奮にあふれ、活動的で、楽しく、充実したものとなることを願って式辞といたします。
  
      平成27年4月8日     福島県立ふたば未来学園高等学校長 丹野純一